2015年4月10日の出来事
電話、してみましたか?
以下の電話の内容は、コンプティーク掲載の小説を読まないと理解できません。
様々な事情により、先に小説を最後まで読んでから電話されることを強く推奨します。
050-3171-8321
少女Aの声
はい、佐倉(※)です。お電話ありがとうございます。それから、お誕生日おめでとう!
これだけ直接伝えたかったんだけど、でも、なかなか会えないから・・・
たまにお電話もらえると、嬉しいな。
え・・・姉さん?私、一人っ子だよ?
あなた、本当に久瀬君(※)?
(ノイズ)
別の女性の声
あなたが選択した、臆病な少女は、あなたがかけた一本の電話によって救われた。
きっと彼女のすべてが変わっていくだろう。
自信を持ち、様々な物事に積極的になり、大勢の友達に囲まれて、幸せな日々を送るだろう。
電話を切った後、少女は不思議に思う。自分の手の中に、電話番号の半分だけが書かれた紙が、握られていたからだ。
なぜその電話番号が半分なのか、もう半分は誰が持っているのか、少女には分からない。
もちろん、あなたの選択により、彼女の姉が完全に消滅してしまったことが原因だ。
少女の笑顔を曇らせるものはもう何もない。
ハッピーエンド。おめでとう。
(※は少しノイズがかかっていたところです)
もう片方の少女にかけた場合
女性の声
その電話番号は、もう既に使われておりません。
誠に申し訳ありませんが、彼女はもう、(ノイズ)世界のどこにも存在しないのです。
050-3171-7890
少女Bの声
はい、佐倉(※)です。お電話、ありがとうございます。
まさか本当に電話をもらえるなんて思ってなかったから、すごく嬉しいです。
お誕生日、おめでとう。本当は、会ってお祝いできるといいんだけど・・・
・・・妹って、何のことですか?私に妹はいないよ?
あなた、本当に久瀬君(※)?
(ノイズ)
別の女性の声
あなたは選択した。偽物の少女は、あなたがかけた1本の電話によって救われた。
きっと彼女の持つ魅力は、これから本物になっていくだろう。
もう褒められた時に、無理をして作り笑いを浮かべ、心の中でため息をつく必要もない。
電話を切った後、少女は不思議に思う。自分の手の中に、電話番号の半分だけが書かれた紙が、握られていたからだ。
なぜその電話番号が半分なのか、もう半分は誰が持っているのか、少女には分からない。
もちろん、あなたの選択により、彼女の妹が完全に消滅してしまったことが原因だ。
彼女はようやく、本物の笑顔を手に入れたのだ。
ハッピーエンド。おめでとう。
(※は少しノイズがかかっていたところです)
もう片方の少女にかけた場合
女性の声
その電話番号は、もう既に使われておりません。
誠に申し訳ありませんが、彼女はもう、(ノイズ)世界のどこにも存在しないのです。
050-3159-7456(久瀬太一)
制作者からのメッセージ
女性の声
お電話、ありがとうございます。
誠に申し訳ありません。諸事情により、現在、少年は、電話に出ることができません。
制作者から、あなたへのメッセージを預かっておりますので、お伝えします。
別の女性の声
あなたはどちらの少女も選択しなかった。
主人公になり変わることなく、その座を自ら明け渡した。
素晴らしい選択だ。
あなたはフィクション上の主人公ではなく、あくまで現実の世界に存在する、読者の立場を守ったのだ。
よってこの物語の結末は、あなたにさえ分からなくなった。
物語の結末を知る者はだれもおらず、だからこそ、私にもまだ見えない、最良の結末を迎える可能性が生まれた。
最後に一つ、あなたに謝らなければならないことがある。
これはフィクションだ。
ある少女を紹介するための、少し長めのたとえ話だ。
だからこの物語は、多くの嘘を含む。
例えば――
中学校に進学し、携帯電話を買ってもらったばかりの少女は存在しない。
AはAでしかなく、BはBでしかない。
だが、彼女にとてもよく似た、事情を持つ少女は実在する。
主人公となるべき、一人の少年もまた、実在する。
そしてあなたは、確かに少年の電話を鳴らした。
フィクションではない、現実の電話を鳴らしたのだ。
それは、作中人物にはかなえられない、読者であるあなただけが持つ力だ。
これは、一人の少女を、あなたに紹介するための物語であり、すでにその役目を終えた。
だが、このテキストを End で締めくくるのは似合わない。
なぜなら、あなたが鳴らしたベルの音が、いずれこの物語を、誰も知らない結末へと、導くのだから。
――To be continued
この後少女にかけた場合
女性の声
(ノイズ)
今回の物語は、既に終了しています。
誠に申し訳ありませんが、3D小説bell再開まで、もうしばらくお待ちください。
もし当企画に興味をお持ちでしたら、ぜひ「3D小説」で検索してみて下さい。
公式ページのプロローグに目を通していただいてから、第1話をお読みいただくのがおすすめです。
最後までお付き合いいただきまして、ありがとうございます。
有志のソルによる録音データは以下(Dropbox)。