聖夜のつどい ほぼ全文 その3
続きになります。
ファ「そういえばドイル」
ドイル「はい。」
ファ「先月号の聖夜通信は読んだかい?」
ドイル「七月号でよろしいですか?」
ファ「ええ。」
レン「もちろん」
ファ「どの記事がよかったかな?」
ドイル「どの記事がよかったか・・・どの記事も、素晴らし、かったです。」
ファ「うん。 うん。」
ファ「特に気に入った記事はなかったかな?」
ドイル「特に気に入った記事・・・クロスワード」
ファ「ほぉ、頭の体操。 君はああいう知的な遊びは好きなのかい?」
ドイル「そうですね、はい。」
レン「凄いなぁ。僕には全然分からないよ。」
ファ「さすがドイル。といったところですな。」
レン「さすがですね。」
太宰「レンブラントはクロスワードを渡したところで、絵でも書いていそうだがな。」
レンと誰か「フフフ」
レン「そっちの方が生産的だと思わないかい?」
太宰「どうだか。」
(コーン、コーンと二回皿にフォークが当たる音。)
レン「そういえば、聖夜通信の中には、善行発表があっただろ?」
ドイル「はい」
レン「それを参考にしてきたで、 それを参考にしてみたのかい?」
ドイル「そう、ですね。」
ファ「ほう?みんな立派な行いであった。そう思うだろ?」
ドイル「ええ」
ファ「そうなるとますます、ドイルの発表が気になるな。」
レン「特に文章の上手い三人だったからね。」
ファ「まぁ太宰も作家の一人であるからな。」
太宰「また無茶なフリを・・・」
レン「ま、もっとも名前だけ使ってるだけだろうけどね。中身が伴っているとは限らないからね。」
太宰「随分な嫌味じゃないか? まぁ、元の太宰という人間はどういう人間であったかはここでは論議しないことにしよう。」
レン「いつものお小言に比べればだいぶマシだと思うんですけどねぇ。」
太宰「ふっ言いように。」
ドイル咳き込む ファ「大丈夫かい?」
ドイル「失礼いたしました。」
太宰「また不潔な・・・」
レン「やたらと・・・・ドイルという字が見える気がするのだが。何かしたのかい?」
ファ「いやまぁ、ドイルが新人ということで、皆も珍しいのだろう。」
レン「ふーん、そうですね。」
ファ「私はどうも横から、こう、なんというのか、なんというのかい『コメント』というのかい?」ドイル「はい」
ファ「コメントというのが流れているのが苦手で、できるだけ目にはいらないようにしているのだが。」 ドイル「なるほど」
太宰「ファーブルももう年だからな」
ファ「まぁそれだけ、教えに近づいて行っているということだと思っているよ。」
ドイル「そうですね、たくさんコメントが来ているみたい。」 レン「ふ~ん」
ドイル「やはり、メリーさんが、メリー様に、対するコメントも多数ありますが。」
メリー「たとえばどのような。」
ドイル「お食事はお口に会いましたか?と。」
メリー「ええ、とてもおいしかったです。」
ファ「それはよかったです。」
メリー「ただ私はし小食なもので。残念ながら多くは食べられないのですが。」
ファ「まぁ、いつもの事なので皆には心配しないように、お、話したことはそのまま伝わっているんだったね。 つい忘れてしまう。」
レン「ふふっ」
太宰「今回の件で、それも伝わっただろう。これ以上メリーへの無礼な言葉は避けるように、皆に言っておくといい。」
スタッフ「すいません、おさげいたします。」
レン「ドイル君?」ドイル「はい」
レン「その手に付けているものはなんだい?」
ドイル「あ、これですか。」
ドイル「これは最近お気に入りでつけてきたんですが。」 レン「うん。」
ドイル「問題あれば外しますが?」 ファ「いやいいよ。」レン「か、か、構わないよ。問題ない」
太宰「スポーツはされるのかな?」
ドイル「いえ、そういったわけではないですが。ま、夏で、暑くて汗をかくので今回リストバンドをつけてきました。」
太宰「なるほど、実に合理的だ。この場所では。」
レン「僕はそれを付けてる時の手首の蒸れる感じがどうも苦手でねぇ。確かに便利なんだけどね。」
太宰「君がそんなことを気にするたまだとは思わなかったよ。」 レン「ふふっ」
レン「しかし、赤と白なんて、目立つ色だね。」
ドイル「そう、ですか? 確かに。 確かに目立つ色です、ね。」
太宰「赤と言えば、レンブラントの好みの色ではなかったか?」
レンブラント「これはオレンジというんだよ。」
太宰「ふっ・・・実に憎たらしいな。」 レン「フフフフ」
太宰「それに赤は、実に野蛮な色だ。」
レン「そっち、そうかい?実に情熱的な、色だと思うがねぇ。」(メリーの皿が最後に片付けられる)
レン「しかし、その、その服装に赤と白なんて、遠くにいても一発でわかりそうだね。」
ドイル「そうですかね・・・・今回、あのー待ち合わせ場所で目立つようにと思ってつけて参りました。」
レンブラント「うん、うん。 なるほど。」
ファ「今回ドイルは初参加ということで、特別に。」
ドイル「まさか、目隠しされてここに来るとは思いませんでした。」
ファ「それは大変失礼した。」
ファ「最近、メリーを狂信的に慕うものがなかなか、制御できなくてね。」
太宰「まぁそういう輩はいつの時代も後を絶たん。」
ファ「まぁ・・・皆、最初に来るときはそうしているのだ。」
レン「しかし物騒になったものだねぇ。」
ファ「まぁそれだけ、この教えを受けた者が多くなってきたということだとは思うのだが。何か、対策を考えていきたいところだな。」
レン「話し合いで解決したいものですよね。」
ファ「そうだな、力ではなく。」
太宰「ふっ、話し合いでどうにかなれば、人はみな既に正しい道を歩んでいるだろう。」
ファ「だからと言って教えを諭すことをあきらめてはならない。」
(ファーブルだけが赤ワインも飲み干す)
ファ「まぁこの話はよそう。」
レン「そうですね、せっかく初めての方もいる事ですし。」
ファ「そうそう、こうやってこういう場で食事をしていると聖夜教典の一節を思い出すんだ。 そう、16章25節。ドイル、分かるよねぇ?」
ドイル「16章、25節。」
ファ「そう、16章25節・・・・英雄の、あの幼き日々。なんと、心にしみる、一節だろう。」
レン「私もあの一説が大好きです。」
ファ「いやぁ。」
太宰「ああいうむこうが意するものではない」(?)
スタッフ「失礼いたします。」
ファ「すまない、君はコメントのチェックに、忙しかったんだったね。踏み入ったことを聞いてしまった。」
ドイル「いえいえ」
レン「まぁ、大切な言葉でも不意に忘れてしまう事ってあるよね。」
ファ「まぁまぁ。」
ドイル「んーんーんー、16章、25節。あ、思い出した。」
ファ「あっ。」レン「おっ。」
ドイル「その地下室で、彼はいくつもの夢に触れた。その夢たちが彼の教師だった。」
ファ「そう、その通り、さすがドイル。新入りながらなかなか頼もしいじゃないか。」
レン「先代そっくりですね。」
ファ「はあ。」
スタッフ「失礼いたします、イゴール豚のマルサラソースでございます。お待たせいたしました。」
ドイル「いただきます。」
ファ「では、いただこうか。」
ファ「んん、これはおいしい。」
レン「うん。やっぱりお肉はおいしいね。君もそう思うだろう?」
ドイル「ええ。とてもおいしいです。」
レン「食事中だったね、すまない。」
太宰「あまりぺちゃくちゃと喋ると、余計なものが口から出るぞ?」
レン「おいしいという感情を共有することは、とても大事なことだと思うんだけどね。」
太宰「減らない口を・・・」 レン「フフフ」
ドイル「この会に来ていた先代は、どのような、方だったんでしょう。」 レン「んん?」
ファ「先代はとても立派な方だった。将棋が好きでね。」
ドイル「将棋が好きで。それはもちろん存じてます。親父なので。」
ファ「ええ、いやあ今でも、先代の、影響されて、将棋好きが会の中にも何人かいるようだ。 君も将棋は好きなのかい?」
ドイル「将棋はもちろん、好きですね。」 レン「んー。」
ファ「ではまた、機会があれば、将棋好きの会員と引き合わせよう。」
レン「しかし、まぁ、父親さんの事を尋ねるなんて、なかなか珍しい事をするね。」
ドイル「いえ、普段の父親と、この会での父親の顔が違うかなと思いまして。」
レン「ふーん。」 ドイル「質問させていただきました。」
レン「なるほど。」
ファ「お父上はご健在かい?」
ドイル「ええ、父上ですか?まぁ・・・・相変わらずです。」
ファ「それは良かった。」
太宰「まぁもっとも、ドイルが、この会でのドイルと、普段でのドイル。違う顔をしていたかどうかは私達にはわからん。」
レン「それは分からないね。」
レン「何やら、先ほどから悲鳴のような言葉が流れているようだけど、何かあったのかい?」
ドイル「悲鳴ですか? えー・・・」
レン「あっ、といってもここは無事か。ごめん、忘れてくれていいよ。」
ドイル「なるほど。」
ドイル「なるほどメリー様という悲鳴がたくさん来ております。」 「ふーーん」
ファ「人気があるのは善い事なのだが。」 太宰「慎みたまえ。」
ファ「皆教えに忠実であってくれれば。」
太宰「ファーブルは随分と、食べるのが早いな。」
ファ「おいしかったものでな。」
レン「どうしたんだい?」
ドイル「いえ、太宰さんはスマホで何をチェックされてるのかなと思いまして。」
太宰「時間、だね。」 ドイル「なるほど。」
太宰「あとはノイマンからの連絡を待っている。」 ドイル「なるほど。」
太宰「いったい奴は何をしているんだ。これではまるで我々が『何かをした』みたいじゃないか。」
「ふふっ」 (ライターみたいなパチンという音が二回。)
レン「その通りなんじゃないんですか?」 ファ「レンブラント、抑えたまえ。」
レン「失礼しました。」
太宰「おたく穏健派のせいで、我々が悪く言われるのは実に不愉快だ。 そのあたりにしておいてくれるかな。」
レン「それだけ行いに気を付けたほうがいいということだね。」
レン「ま、それはお互いか。」
- 最終更新:2015-01-05 09:52:37